In Japanese(EUC).

第三夜 「iHamster」登場


 iHamsterはあらゆる意味で斬新だった。

 透き通るような被毛(*)。そこにブルーのアクセント。丸っこく愛くるしい体型は今までに誰も見た事の無いハムスターだった。さらに、飼育を簡単に始められて世話が楽であるという。

 iHamsterは、一般に普及しているハムスターとは別の種類である。そのため、交配する事は不可能である。さらに一部の器官の欠損も認められた。それを取り沙汰して批判されたりもした。しかし、iHamsterの魅力の前には瑣末事に過ぎなかった。

 iHamsterの販売は、これまでのハムスターの流通の常識を覆すものだった。販路の限定を行った。つまり、ブリーダーが認定するショップにしか卸さなかったのだ。
 認定の条件は、生体の扱いや、顧客への飼育方法の説明について、一定のレベルを満たしていなければならない。
 この方針は一部のショップの反感を買うことになった。しかし、多くのショップでハムスターはお世辞にも満足な扱われ方はされておらず、顧客に対しても正しい飼育方法の説明がなされていないのが現状だった。それを憂慮する声も少なからずあがっていた。このような現状を改善する取り組みとして、現在では積極的に評価されている。

 それにしても、iHamsterはブリーディングが追いつかないほどに売れに売れたのである。ハムスター愛好家のみならず、今までハムスターに興味を持たなかった人々まで巻き込んで。

 そしてその勢いは、ハムスター界のみに留まることはなかった。

(つづく)

(*)世間では骨が透けて見えそうなので「スケルトン」と呼ばれることが多いが、本当は「トランスルーセント」と呼んで欲しいらしい


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2000-feb-20
1999-sep-15