犬を飼う心構えについて


 我が家には6歳になる犬がいる。秋のある日に近所の田んぼに捨てられていたのを拾ってきたのだ。その時はまだ生後1〜2カ月の頃で、そのまま放っておけばおそらく死んでしまうだろうと思われた。その姿があまりに哀れだったのと、子犬特有のつぶらな瞳で見つめられたことで、もともとの動物好きの本能を刺激され、当時アパート住まいにも関わらず、大家や同じアパートに住んでいる人の了解を取り付けて飼い始めたのだ。しかし、実際飼ってみると、犬を飼うということは、なんと大変なことなのだろうかということに気づいたのだった。
 まず、毎日散歩させてやらなければならない。街では、今、犬はひとりで歩く権利を完全に奪われている。だから、必然的に飼い主が連れて歩くことになる。最初のうちはいいが、雨の日も雪の日も体調が悪くても、散歩させてやらなければならない。我が家では多くの場合朝は私が、夕方は妻か娘がその任務に当たっているが、休日の夕方ともなると、家族全員を引き連れていかないと満足できないのだからこれは辛い。
 さらに最大の問題は、飛行機などに乗って遠くへ出かける際、簡単には連れていけないということだ。特に海外旅行などに連れていくのはほぼ不可能に近い。ペットホテルに預けるといっても費用も馬鹿にならないし、何より困るのは、うちの犬は飼い主と一緒でないと食事をしないのだ、以前3日間旅行する際に知人に預けたのだが、その間水しか飲まずいっさいの食物を口にしなかった。これは困る。飼っている側のわがままで犬を餓死させる訳にはいかないのだ。だから、ここのところ6年間、我が家の家族旅行は「犬も泊まれるペンション」というやつのお世話になっている。
 まぁ、こういったことはしつけの問題やその犬の性格にもよるのだろうが、こればかりは育ってみないとわからない部分も大きい。犬を飼うということは、いつもこういった問題が発生するということを覚悟して行わねばならないということを肝に銘じておくべきだ。長く生きれば15年から20年、その間ずっと付きまとう重要な問題なのだ。可愛いといって気軽に飼えるものではなく、相応の心構えを持って始めないと、飼い主もそして犬も、のちのち悲しい思いをする可能性のあるものなのだ。

 さて、サッカーの話に進もう。
 昨今のJリーグブーム衰退に伴って、昨年末には各チームで多くの選手が戦力外通告を受けた。収入が93年94年に比べると大幅に目減りしてしまっているチームも多い。当然その中の人件費で養える選手の数は制限されてくる。だから選手を減らす。これは仕方のないことだ。今回戦力外とされた選手の中には、何年かプレーして残念ながら芽が出なかった選手もいるだろう。過去に活躍した選手もいずれはチームを去るときが来る。こういった選手達はある意味では本人も納得してチームを出ていけるだろう。しかし、今ここで問題にしたいのは、昨年末に戦力外通告を受けた選手の中に、高校卒やユース出身でまだ1年から2年の期間しか在籍していないのに戦力外の通告を受けて、チームを去らねばならない選手が多かったことだ。
 これはどういうことなのだろう。本当に彼らは「使えない」選手なのだろうか。だったらなぜ、1年前2年前にプロとしてチームに受け入れたのだろう。スカウトの目が甘かったからなのか。それにしては、その数が余りに多いのではないだろうか。
 そう。答えは見えている。彼らは、チーム運営のツケを背負わされた可哀相な人身御供なのだ。
 すべてにチームに共通して言える問題ではないが、こと人事面においてフロントの見通しの甘さが目立つチームが多いと思う。大赤字を抱えているといっても、その赤字は昨年一年間に出来たものではなく5年間で累積されたものだ。観客数の目減りは、昨年急に始まったことではない。なのに、なぜ無計画に大量の若手を入団させたのか。チームはその責任の大きさを自覚しているのか。チームにとってみれば「過渡期のこと」で済むかもしれないが、その本人にとっては一生の問題だ。たとえば大学進学をあきらめてやってきた者に対して、チームはその将来の責任を取れるのだろうか。
 5年前、ブームブームとおだてられて、確かにチームも選手もサポーターも舞い上がっていた。みんながかなわぬ夢を見ていた。しかし、この時期に来てみんな現実に目覚め始めている。その中で、目覚めが一番遅いのは、各チームのフロントかもしれない。もっともっとしっかりした心構えを持って運営に当たって欲しい。前述の犬の話ではないが、フロントも選手ものちのち悲しい思いをしないために。

 ちなみに、我が浦和レッドダイヤモンズは、今期、太田、持山、花山の三人に戦力外の通告をした。三選手の活躍を祈っている。
(98.01.05)(98.01.07修正)


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